小水力発電施設等視察

1.目的:日本の地形的特徴を生かした未利用自然エネルギー資源として小水力発電が注目されつつあり、府内でも検討を進める自治体等も現れている。これらに対し、情報提供や共同参画を行うことはOPEAの今後 の活動として望まれる。そこで、事業規模から、手作りの水車まで広く小水力発電設備の認識を深めるため、奈良県の事例につき視察を行った。

2.視察日時:平成28年3月29日(火)~3月30日(水)

3.参加者:会員14名

4.視察施設
  ① 小又川発電所(下北山村大字上池原字廻溝)
  ② 東吉野発電所(東吉野村日裏)
  ③ 三茶屋ピコ発電(吉野町三茶屋328-1)
  ④ その他
     ○ ㈱クリーンエナジー奈良・吉野発電所(大淀町馬佐)
     ○ 大滝ダム (川上村大字大滝)
     ○ 関電樫尾発電所取水口(吉野町樫尾)
     ○ ふるさと村(東吉野村大豆北)

5.視察概要

① 小又川発電所(説明:下北山村産業建設課 久保田智弘氏)
 多雨地帯として知られる大峰山系大台ヶ原山の南麓に位置する下北山村において、未利用水資源を活用し、エネルギーの地元利用、地域の活性化を図るため、平成5年から発電を継続。収益は年約650万円、維持管理費は約400万円であり、スポーツ公園施設運営等に有効に活用されている。20数年の間、種々の原因で故障・停止になることもあり、運転管理・事故対応が課題。また長期の運転により設備・装置の更新が必要であり、小規模施設の収益から、費用を産み出すことが困難であることも課題である。
 ・所在地:吉野郡下北山村大字上池原字廻溝
 ・実施主体:奈良県下北山村
 ・設置時期:平成5年3月25日
 ・取水河川:小又川(一級河川)
 ・落差:95.1m
 ・発電方式:水車(横軸単輪一射ベルトン型)、発電機(三相交流同期発電機)
 ・発電量:55kw(常時)・98kw(最大)・年間750,000kwh
 ・総工費:3億2900万円
 ・用途:スポーツ公園(70%)・売電(30%)

② 東吉野発電所(説明:東吉野水力発電所㈱ 代表取締役 森田康照氏)
 人口2100人の東吉野村の活性化・村づくりに役立て、大正3年から昭和38年まで稼働した「つくばね発電所」を復活するため、東吉野発電所㈱が立ち上げられた。発電機、導水管等設備機器等は整えられており、完成をめざし工事が進められている。
 ・所在地:吉野郡東吉野村日裏
 ・実施主体:東吉野水力発電株式会社
 ・設置時期:平成28年4月予定
 ・取水河川:日裏川上流
 ・発電方式:水路式、クロスフロー発電機
 ・発電量: 82kw(最大)・年間646,000kwh
 ・用途:売電

③ 三茶屋ピコ発電(吉野小水力利用推進協議会 竹谷康則会長、岸田かおる氏)
 40年前に猪よけに使われていた手作り水力発電機が平成24年9月に見つけられたことを機に、この地域で小水力発電の取組が始められた。この間、お年寄用外灯用ホイール水車、集会所非常用電源用の木製水車、駐車場外灯用の3m木製水車、多目的トイレ外灯用の2連水車の設置など、用途を特化した、小規模の発電を住民が手作りすることが特徴。
 ・所在地:吉野郡吉野町三茶屋328-1
 ・実施主体:吉野小水力利用推進協議会
 ・設置時期:2013年6月
 ・取水河川:津風呂川水系用水路
 ・発電方式:水車(木製水車等)
       発電機(HUBダイナモ発電機)
 ・用途 :照明等

④ その他

○ ㈱クリーンエナジー奈良・吉野発電所(大淀町馬佐)

 間伐材等木質バイオマスを燃料とし、発電出力6,500kw、年間発電量43,000Mkwh。昨年から稼働した施設を外から見学。通常見られる白煙は見られず、原料木材が敷地内に保管されていた。

○ 大滝ダム (川上村大字大滝)

 紀の川水系吉野川で上流の大迫ダムとともに治水、利水、発電を目的とする多目的ダム。平成24年6月、利水目的の供用開始。大滝発電所は落差67.53m、最大出力10500kw、使用水量18㎥/秒で平成16年10月運用開始。

○ 関電樫尾発電所取水口(吉野町樫尾)

 樫尾発電所は吉野川上流の大滝発電所と下流の吉野発電所の間にあり、取水量最大8.35㎥/秒である。小又川発電所の0.18㎥/秒、東吉野発電所の0.10㎥/秒と比べ遥かに取水量が多い。樫尾発電所の発電量は3650kwであり、小水力発電の上限の1000kwとの差は大きくはなく、比較的小規模の発電所と思われるが、小又川と東吉野両発電所の発電量がそれぞれ最大98kw、82kwであり、更に規模が小さく、取水量の大小関係も想定される。

○ ふるさと村(東吉野村大豆北)

 西郷川の渓流、廃校舎を利用した、堺市との交流リゾート施設。キャンプ場、温泉、宿泊施設、吊り橋、魚釣り場などがある。

オペア小水力発電施設等視察スケジュール(参考)

○ 日  時   平成28年3月29日(火)~30日(水)

○ 集合場所   近鉄「大和八木」駅

○ 参加人数   14名
   岩崎、大坂、川島、北村健、北村秀、槌野、出嶋、野木、平石、藤田、三谷、蓑原、山田、吉田

○スケジュール
① 1日目
 ・10:30      集合:大和八木駅南出口
 ・10:45      出発  →  R169 → 下北山村をめざす
           クリーンエナジー奈良・吉野発電所(大淀町馬佐)を経由場外から、木質チップでの発電の様子を見る
 ・12:15~13:00  昼食 「朝日館」(川上村 柏木)
 ・14:00~15:00  小又川発電所見学 (下北山村大字上池原字廻溝)
          下北山村 産業建設課 森岡課長(当日久保田氏)
 ・17:15~     ホテル杉の湯 (川上村迫)
② 2日目
 ・9:30      ホテル杉の湯 出発
 ・10:00      大滝ダム(川上村大字大滝)
 ・11:00~11:45  東吉野発電所(東吉野村日裏)東吉野発電所㈱
 ・12:00~13:00  昼食「ふるさと村食堂 いちえ」(東吉野村大豆北)
 ・13:15      日本オオカミの像(東吉野村小川)
 ・13:30~14:00  関電樫尾発電所取水口(吉野町樫尾)
 ・14:30~16:30  三茶屋ピコ発電(吉野町三茶屋)吉野小水力利用推進協議会
 ・17:00      解散(大和八木駅)